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49●全ての存在は響き合っている 2


 今回で2年半続いたこの連載も最後となる。
  連載がスタートした04年9月末(11月号)は、ちょうど前作『地球交響曲 第五番』の上映が始まったばかりの頃であった。そしてこの最終回を書いている今は、07年4月28日から東京都写真美術館ホールで始まる『第六番』のロードショーを間近に控えた時だ。
  あらかじめ計画していた訳ではないのだが、お蔭で、『第五番』と『第六番』にまつわる29本のエッセイを書くことができたことを、読者の皆様と編集部に深く感謝している。
  監督である私が言うのも変な話だが、『地球交響曲』という映画は、本当に何かに導かれるように動いてゆく映画である。これから上映が始まる『第六番』もそうであった。
  前作『第五番』の全国での自主上映活動がようやく軌道に乗り始めた04年12月、後に『第六番』の出演者となったケリー・ヨストからクリスマスカードが届いた。その中でケリーは、翌05年の3月に日本を訪れるのだが、その折、私に会えないか、と尋ねてきた。彼女が来日する日、私は和歌山県新宮市で開かれる『第五番』の自主上映会に参加し、その後、紀伊半島のいくつかの聖地を訪れる計画を立てていた。東京に滞在する予定のケリーに会うのは難しい。しかし、ケリーには、是非とも会いたい。
  さてどうすればよいのか。
  私は思い切って、まだ面識もないケリーを、紀伊半島聖地の旅に誘ったのだ。
  色々な予定もあるだろうし、来日したばかりで面識もない私達と見知らぬ土地を訪れるなんて、多分無理だろう、と思いつつ。
  しかし、ケリーの答えは意外にも「YES」だった。
  こうして、『第六番』への旅が始まった。ケリーは観客自身の手で運営される自主上映会の様子をつぶさに観た。『第六番』に登場する神倉神社のごとびき岩や那智大社大滝で共に祈った。
  決定的なことが起こったのは、死と再生の古湯、湯ノ峰温泉(和歌山県本宮町)に宿を取った時のことである。
  入浴を誘った妻、ゆかり(プロデューサー)にケリーは涙ながらにある告白をした。5年前、私達は、制作中の『第四番』にケリーの音楽を使うため初めて彼女に手紙を書いた。その頃、ケリーは乳ガンの大手術を終えたばかりで絶望の淵にあった。私達の手紙が彼女の生きる希望になった。
  告白は一緒に風呂に入る妻にショックを与えないためのケリーの心遣いだった。
  この話を聞いた時、私達は『第六番』のテーマを"音楽(バイブレーション)"と定め、ケリーを出演者のひとりとしてスタートを切る決意を固めたのであった。
  この宇宙の全ての存在は、それぞれに独自の"音楽"を奏でながら互いに響き合い、壮大な調和の音楽を奏でている。
 全ての存在は時空を超えて響き合っている。 『第六番』、是非観て下さい。ありがとう。
 

デジタルTVガイド・連載『地球のかけら』 2007年5月号


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